「アルコールはあまりからだに良くない。心には時として最高に良い」というのは世の常識ですね。
アトピーの人としては「アルコールを飲むと痒くなる」「数日間肌の赤みや痒みが酷くなる」というのがよくあります。私もアトピーがひどい時は飲み始めると痒くなるので、服の上からつねっていました。
さて、ではそんなアルコールについて、アトピーという面から見ていきましょう。
まずは第一弾としてアルコールと腸内環境の関係から見ていきます。(シリーズ予定)
アルコールによるグラム陰性細菌の増加
悪玉菌、善玉菌、日和見菌という言い方で腸内細菌を表すことがありますが、全く違う区別で、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、という分け方もあります。
グラム陽性菌の有名どころとしては乳酸菌やビフィズス菌、グラム陰性菌の有名どころとしては大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌が挙げられます。
グラム陽性細菌の中にも増えたら人体に害になる種別もいるので、陰性陽性で良い悪いというわけではありません。
※以下グラム陰性細菌とは(MSDマニュアル様より引用)
グラム陰性細菌という分類は、グラム染色と呼ばれる化学的処理の適用後に細菌が何色に染色されるに基づくものです。グラム陰性細菌はこの処理によって赤く染まります。青色に染まる細菌もあり、 グラム陽性細菌といいます。グラム陰性細菌とグラム陽性細菌は、その細胞壁の違いから異なる色で染色されます。こうした菌の種類の違いによって、生じる感染症の種類も異なり、また効果的な抗菌薬の種類も異なります。
このグラム陰性細菌は自分が死ぬ時や破壊された時にその莢膜から、内毒素:エンドトキシンという有害物質を放出するのですが、グラム陰性細菌はアルコールの摂取で増えると言われています。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2614138/#R67)
そうなると…
エンドトキシンの毒性の影響
エンドドキシンは血中に入り込むと、免疫・炎症反応を起こすサイトカイン(TNFα、IL-6、MCP1)やプロスタグラジンの産生などに繋がります。
エンドトキシンは基本的には「腸のバリア機能により、人体には吸収されないと言われており、万が一吸収されても、少量なら肝臓が無毒化してくれます」と言われているのですが…(外傷などによる侵入は別)
『少量しか入らず』『健康な肝臓であれば』の話ですね。
でもね、アルコールには、腸のあの状態を引き起こす作用があるのです。
それが…
アルコールは腸の透過性を高める
「腸の透過性」ってもしや、と思ったあなたは立派な栄養知り。そうです。この透過性が高まりに高まって起こるのが「リーキガット」。さらに…
リーキーガットの図
アルコールが体内に入り代謝していくその際に、アセトアルデヒドというからだにとっては劇薬(猛毒)であるアセトアルデヒドというものが産生されます。
このアセトアルデヒドとアルコールそのものが、腸の透過性を高めることが研究で証明されました。(なんでかの詳細はまだわかっていないみたいか私が調べきれていないか)
さらにマウスの実験では、タイトジャンクション(図参照)に関わるたんぱく質も減少させるよ、という研究結果も出ています。
ということで、アルコールは腸をリーキーガット状態に向かわせる可能性がとても高い。
慢性的にアトピーの人は、もともと腸内環境が悪く、リーキーガットの人も多い。ですので考察のしての結論としては、アルコールがその腸内状態をより悪化させ、エンドトキシンをはじめとする毒素や異物が体内に入りやすくなって、血中の毒素が増える、炎症反応が出る…です。
【端的な表現にしますと以下】
お酒
↓
リーキーガットや
腸内細菌叢の悪化
↓
エンドトキシンや
異物(未消化物や細菌)
その他毒素
が体内に
↓
血中へ毒素等侵入
↓
免疫反応
↓
炎症
リーキーガットになると遅延性アレルギーやその他症状が強く現れますので、アトピーの人はアレルギーによる炎症が強まります。どんどん連なっていきますね。
からだの炎症反応が起こると、様々なビタミンミネラルタンパク質の消費が起こり、自律神経は緊張気味に。またアトピー(全体調不良人)の治癒の要であるコルチゾールが消費されます。
コルチゾールは、炎症に対する反応のために糖新生を起こして糖の供給を多くしたり、免疫(TNFα)が過剰になりすぎないように免疫抑制のためにも分泌されるのですね。
アトピー×アルコール=痒みのまとめ
・炎症によって緊急的にコルチゾールの分泌を出されると普段の量より多く出さなければいけないということなので、その後出す量が減ってぐったりさんになったり、アトピーが悪化しやすいことが考えられます。
・HPA軸機能異常(副腎疲労)の人は、その症状がより悪化することも当然考えられます。そして慢性的なアトピーの人の多くがHPA軸機能異常になっています。
・肝臓は、エンドトキシン、それによる炎症性サイトカインなどでの活性酸素、アセトアルデヒド、リーキーによる毒素漏れなどでボディブローを打たれ続ける耐久レースのようになりますので、お疲れモードに拍車がかかります。肝臓炎症、機能低下ですね。内臓が腫れれば、その臓器周辺と関わる筋肉が緊張し、部位の血流が悪くなり痒みにつながります。
・肝臓の機能低下は、低血糖につながります。低血糖は痒みを増強します。
低血糖についてはこちら▷「アトピーの人に血糖コントロールが必要な理由」
・リーキガットによるアレルギーや腸内細菌全体の悪化によってヒスタミンが増→痒みにつながります。
ということで、アルコール→アセトアルデヒドをスタートとしてそこから「あんた!これも持っていき!」とお節介の関西のおばちゃんのように様々な状態がくっついてきます。
たとえ重度のリーキガットになっていなくても、腸内細菌叢のバランスも当然悪くなるので、ディスバイオーシスを起こしてやはり毒素量はUP、肝臓の負担増です。
アルコール×腸の対策
・腸の透過性が高まるのであれば、腸の上皮細胞たちの材料を入れてあげましょう。【亜鉛、L-グルタミン、VA、Mg】あたりですね。
・コルチゾール、ヒスタミン対策に【ビタミンC、Mg】
・腸内細菌が乱れるので、【プロバイオティクス】(いつもより多めがいいのでは無いかと思う)
・肝臓のサポート、アセトアルデヒドやその他毒素の解毒に【ビタミンB群、VC、Mg】
一番身近にできることといえば、野菜を入れて煮込んだ出汁たっぷりのお味噌汁を飲んだ後も朝起き抜けも飲むと良いかと思います。お腹いっぱいなら具を食べなくても、お汁を飲むだけで違う。
こちらは対策、対処ですのが、アトピー・体調不良渦中の人は、やはり状態が良くなって安定するまではお酒は飲まないことを個人的にはお勧めします。
参考論文▽
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10845660/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2614138/
おまけ
シリーズとして
・低血糖からみたアトピー×アルコール
・ヒスタミンから見たアトピー×アルコール
・私のやっているお酒前後のケア
をあげようかなと計画中。
重なる部分もあるけど、見方の方向を変えて考えられるようになると、点と点が繋がるので、とても理解がしやすくなると思いまして。
では!
お酒は梅酒が大好きな笹森さんでした。
↑この梅酒最高に美味しいですよ。飲んだ人いたら、ぜひ感想送ってね。